日時:令和4年2月19日(土) 9:15~12:40
会場:グランドホクヨウ
次第
受付中:生徒によるポスター発表
- 校長挨拶
- 代表生徒による探求学習成果プレゼンテーション
- 持続可能で気候変動に対応する社会構築政策提言(Oposum連携事業)
- 生徒、自治体関係者によるパネルディスカッション「地域協働事業がもたらしたもの」
- 運営指導委員講評
<運営指導委員>
拓殖大学教授 国際学部学部長 甲斐伸好 氏(オンライン出席)
尚絅学院大学名誉教授 森田明彦 氏(オンライン出席)
東北公益文科大学教授 スルトノフ・ミルドザイド 氏(オンライン出席)
米沢栄養大学教授 金光秀子 氏
米沢市役所 企画調整部長 遠藤直樹 氏(オンライン出席)
<講師>
芝浦工業大学教授 栗島英明 氏
芝浦工業大学教授 谷田川ルミ 氏
千葉大学教授 倉阪秀史 氏
千葉大学講師 宮崎文彦 氏
米沢栄養大学教授 北林蒔子 氏
生徒によるポスター発表
2年生課題研究
- 伊藤萌果「有機野菜で多くの人に健康を届ける」
- 内海和真「米沢を学生支援が可能な街にする」
- 遠藤大聖「米沢市を持続可能なまちへ」
- 遠藤みなみ「地域のエネルギー循環」
- 大沼勇吾「コンポストを身近に」
- 黒田梨々花「未来ある町づくり」
- 小山優美「インバウンドを獲得するために」
- 佐藤航河「学校給食のフードロス削減にむけて」
- 佐藤由望「チテンゲを使って国際支援」
- 鈴木誠也「人に優しく、災害に強い街」
- 髙橋夕青「高齢者の孤独感を無くすためには」
- 髙橋鷹駿「たいむいずまねーはほんとうなのか」
- 髙橋 凜「ゲームが学習に与える影響」
- 竹原 築「食を通じてその人の人生を豊かにする」
- 田嶋水晶「有機農法の価値を高める」
- 長谷川玲「年代別の人気楽曲の旋律に用いられる音数は景気の変化に関係性はあるのか」
- 樋口 楓「外国籍の方々の美容院利用」
- 眞島利可子「高齢者の健康感を向上させるためには」
- 村山幸恵「水素自動車の有用性」
- 渡部昴生「規格外品の価値」
1年生グループ課題研究
- 多文化共生グループ「山形県米沢市における『ハラルフード』を用いたムスリム対応の一提案と実践」
- 食と健康グループ 「有機野菜に対する高畠町町民の関心と認識」
校長挨拶
本日は、オンラインでも参加していただくという形での開催となったが、この報告会に出席していただき感謝を申し上げたい。私が教員を始めてから50年たったが、とても後悔していることがある。私が教師を始めた当初は、皆さんもご存知のように、オイルショックがあった。その当時に、もっとこのような教育を子ども達にしていれば、世の中が変わっていたのではないかと思う。私が教えていた中学校、高校の生徒たちは今、高齢者となっているが、その頃の私達が、これからの世の中をどのようにしなければならないか、今の九里学園の生徒たちのように必死に考え、それを世界に発信していたら、どうなっていただろうか。当時はオイルショックと並行して、ドルショックもあった。円高が進んで、日本人がどんどん海外に出て行ったが、その時に、日本人がこれからの世界について考え、世界に伝えていたら、今のような状態にはなっていなかったのではないか、と後悔している。今の若者たちにはまさにSDGs、持続可能な社会をどのように作っていくか考えていかなければならない。それは彼ら自身の生き方、そしてその子どもたち、孫たちにもつながる大事な課題である。これらの課題解決に向けて、これから生徒たちが発表をしていく。生徒たちのエネルギーをぜひ評価していただきたい。
来賓挨拶
衆議院議員 鈴木憲和氏
九里学園の生徒の皆さんのポスター発表を聞かせてもらった、10代でも地域、社会のことをここまで考える機会を与えている教育をされていて、学校の先生方にもお礼を言いたい。今回のプレゼンテーションも、初めて会う人たちに、発表するということで、最初は緊張していたと思う。しかし皆さんにはぜひ勇気をもって、知らないことにチャレンジしてもらいたい。「ハラルフード」のポスター発表をしていたグループが、私に発表を聞いてくださいと話しかけてきた。それがきっかけでよい発表を聞くことができた。このように勇気をもって一歩、一歩進んでいくことが、学校だけでなく、卒業してからも大事なことだと思う。そして、これからの日本も世界も「誰一人取り残さない」ことが大切である。日本も人口が減っていくなか、誰一人取り残さないために、自分たちは何ができるか。ポスター発表をしたグループには、「来年ハラルの弁当が道の駅に並んだら素敵だね。」「米粉の製品が本当に販売されたら素敵だね。」と伝えた。うまくいかないことがあったとしても、失敗から学ぶこともたくさんある。高校生でもいろいろと考えて、ここまで様々なチャレンジをしている。その結果が出たら素晴らしい。私もお手伝いできることがあったら、ぜひ個人的にもお手伝いしたい。これからの皆さんの頑張りに期待したい。
代表生徒による探究学習成果プレゼンテーション
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2年 中山きらり 「在住外国人にも優しいゴミの分別」
「Global Meetings 2022」英語発表部門 銀賞
「全国高校生 MY PROJECT AWARD 2021」出場
米沢市に在住している外国人の悩みの一つである「ごみ分別」という悩みに焦点をおき、彼らの悩みを解決するためにゴミの分別方法動画を作成する。また、この動画を作成することで米沢市の自然環境を守ると共に在住外国人が快適に住み続けられるまちづくりを目指す。
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2年 齋藤 千紘 「紅花-世界農業遺産の認定に向けた発信」
「Global Meetings 2022」 日本語発表部門 銀賞
「全国高校生 MY PROJECT AWARD 2021」出場
「目指せ世界農業遺産! 紅花振興シンポジウム」にて発表
山形の「紅花」で世界発信のために地域ブランド化する。そして、誰でも食べられるような食品を開発。「紅花」の食品開発で農の価値を発信し、高める。
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1年多文化共生グループ「地方における可視化されない外国人の生活の分析と検討」
東京や首都圏には多くの外国人が集住するが、地方部にも一定数存在する。地方に住む外国人は、都市部に比べて可視化されにくいと考えられる。地方部に住む外国人は都市部に比べ、日本で暮らす上でより困難な状況にあると推測される。その可視化されない外国人がどのような生活をし、どのようなコミュニティに属しているのかを明らかにするために、アンケートや生活日誌データを用い調査をおこなった。ほとんどの外国人の生活パターンは、家と職場の往復であるが、子どもをもつ人は比較的行動範囲が広い。結婚している女性は、交友関係の広い外国人・日本人と暮らしており、専業主婦の方も一定数存在した。
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1年食と健康グループ「魅力ある高畠の食材の情報発信と学校給食での提供」
地方の過疎化や高齢化が進む昨今、地域資源の活用が重要である。高畠町には「有機農業」発祥の地という地域の魅力が存在しており、地産地消の促進と町民の有機野菜を通した食生活リテラシーの向上により、地域活性化に繋げていきたいと考えた。そのためにレシピ作り、パンフレット作成、中学校での高畠の食材についての授業を行った。アンケート調査によると、高畠の食材の認知度の低さが見えたため、今後は食材の情報の発信の仕方をさらに工夫し、地域の方々に高畠の食材の魅力を伝えたい。
持続可能で気候変動に対応する社会構築政策提言(Oposum連携事業)
Oposum(基礎自治体レベルでの低炭素化政策検討支援ツールの開発と社会実装に関する研究チーム)と連携し、脱炭素社会構築と地域課題解決を同時に考え、持続可能な地域社会を構築する政策について探求してきた。代表グループがその政策を提言し、質疑応答と、講師からの講評をいただいた。
グループ1.「スイスイ移動スイ進プロジェクト」
ビッグデータの活用により渋滞しやすいエリアを可視化。渋滞エリア通行禁止条例と中心部自家用車侵入禁止条例を提案。これらの政策により公共交通機関であるバスの利用が増加し、ゼロカーボンを達成することができる。また、バスを利用すると「地域ポイント」を付与される仕組みを作り、貯まったポイントを地域で使えるようにするという経済的手法も提案。
グループ2.「利雪サイクルでリサイクル」
除雪の支援システムの確立し、除雪利用者と除雪ボランティアのマッチングを行う。利用者は利用用料を市に支払い、ボランティアには返礼品を送る。この返礼品は、発砲スチロールを使用した簡易的な雪室を利用して冷蔵保管されているYONEMUROというブランド商品。この雪室の雪は施設の冷房にも使用することができ、これによりCO₂を削減することができる。また、夏に雪を使ったイベントを開催し、地元のPRと雪室ブランド商品の販売、雪室の技術や食品保存方法の継承を行う。
グループ3.「ペレットストーブで脱炭素」
冬の暖房で使用されている石油ストーブやエアコンをペレットストーブに変えることで、2050年までにカーボンゼロに貢献する。ペレットストーブを普及させるために、新しく家を建てようとしている人に、米沢市環境生活課による環境教育と、ペレットストーブを実際に体験できる体験会を開催する。また、米沢市の環境ブランド「米沢SDGsブランド」を作成し、ブランド加盟の企業に、法人税がなくなる、YouTubeの広告費が無料になるというメリットを作る。そして、木質ペレットを生産している企業に対し、林業に必要な機材や、費用を支援する。またペレットストーブ購入補助金制度を復活させて、購入を促す。
パネルディスカッション「地域協働事業がもたらしたもの」
探究学習で成長した部分や、学び、経験を話した。探究学習や答えのない問いを突き詰める学習の教育効果を実感した。
【パネリスト】
九里学園高等学校3年 我妻里莉
九里学園高等学校3年 石川舞桜
九里学園高等学校3年 齋藤謙信
高畠町役場 商工観光課 鈴木祐介氏
【進行】 NPO法人IVY職員 小笠原直子氏
運営指導委員からの講評
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尚絅学院大学 森田明彦教授
ここ5~6年の間、九里学園の教育に関わっているが、毎年レベルアップしている。先生方の熱意、先輩が後輩に伝えて教えていく、という流れができている。今求められている教育がされている。今の時代は正解がない時代。今必要とされているいるスキルを身に付けている。発表をみると、アイディアが素晴らしい。今の時代は、消費者と一緒に商品を作り上げていく。どのような人に商品を提供したいか、と考えると実効性が高い商品ができる。また、我妻さんは起業したと思っているが、ぜひ早く起業して、高畠町を応援してもらいたい。
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拓殖大学 甲斐伸好教授
高校生の発表としてのレベルの高さに舌を巻いた。生徒が発表した内容は、いずれも地域の問題であると同時に、日本が抱える問題。生徒たちは、日本の課題解決を考えている。また、政策提言では、雪を利用するアイディア、ペレットストーブの利用などがあったことに驚いた。雪がないところで生まれ育っているので、雪の大変さは知らない。先日、九里学園を訪れた後、近くの造り酒屋でタイ人の観光客と会った。彼らは雪を見たくてやって来た。雪は大変かもしれないが、同時に憧れでもある。憧れる人たちは、国内だけではく、世界にもいる。またパネルディスカッションは素晴らしい内容だった。皆さんがそのような力を育てることができたのは、地域の力だと思う。マザーテレサは、愛情の反対は無関心だと言った。ぜひ世の中に関心を持って、身近なところから日本を良くしていってほしい。
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東北公益文化大学 スルトノフ・ミルドザイド 教授
パネルディスカッションはインパクトがあった。去年までの報告会は、生徒からの発信が少ないと思っていたが、今年は発信があって完璧だった。今日の発表で分かるように、この3年間で膨大な仕事をなされてきた。九里学園の運営者と指導教員は地域、国外、海外の学術機関、 非学術機関と提携しながら、良い教育改革を実施できた。このプログラムに参加した学生は、将来に向かって、社会人、大学でも必要なスキルと知識を取得できた。アンケートを見ても、生徒の活動は、学力、思考力、指導力の向上に役立っている。世界の課題に対しても、生徒の関心が高まっている。指導教員の教育方法と授業内容は十分改善できて、良い経験を今後の教育プログラムに組み込まれると継続的な効果になると思う。
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山形県立米沢栄養大学 金光秀子教授
本日の発表を見て、大変感動した。研究テーマは我々の大学とも関係のある、健康、人、食について取り上げていただいて、感慨深く聞かせてもらった。今日発表した高校生の皆さんは、地域と積極的に関わった活動していることに感動した。発表の中では、人口減少や人口流出という言葉が出てきたが、私どもの大学は、県外からの学生だけでなく、県内の学生も多く通っている。地元出身の学生は、この場所から一歩も出たくない学生もたくさんいる。地元についてもっと探求し、発信していただければ、多くの人が地元に残り、人口減少の解決に役立つのではないだろうか。
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米沢市役所 遠藤直樹企画調整部長
全体の講評については、市役所で共有し、後でコメントを返したい。探求学習のプレゼンテーションについて、齋藤さんが発表した紅花の研究については、来年度は米沢市でも重点目標として取り組んでいく。ぜひ一緒に紅花について、世界に発信していきましょう。政策提言では、ペレットストーブの提案があったが、木を暖房として利用する方法として、薪ストーブや、米沢でも行っている木質バイオマス発電などもある。色々なアイディアを出し合って、みんなで議論することで、より良い方法が見つかる。これからも、皆さんと一緒に議論をしていきたい。また、パネルディスカッションは若者の力を感じた。皆さんには世界で活躍してもらいたい。その中で、米沢のことも忘れずに、米沢のことを考えてもらいたい。米沢に残る方には、一緒に米沢を良くしていきましょう、と言いたい。皆さんの発表は素晴らしかった。米沢市も皆さんと一緒に頑張っていきたい。