世界の格差を体験するワークショップ
「貿易ゲーム」
日時:令和3年5月7日(金)
対象:1~3年生
[活動内容]
「100人村ワークショップ」に引き続き、世界の格差を学ぶために「貿易ゲーム」を行った。
生徒はA~Jの10国に分かれ、国ごとに分配された資金と、材料(資源)、道具(技術)を使って製品を作ることを指示された。
製品を販売するなどして、できるだけ多くのお金を稼ぐのが目的。
国に対して最初に分配される資金や資源、技術が違っており、A・B国などの先進国は、豊富な資金と技術を使ってたくさん製品を作っていた。
また道具(技術)があっても材料(資源)がない国や、I・J国などは材料(資源)があっても道具(技術)がないなどの格差があった。
道具(技術)がない国は、労働力を提供して稼いだり、材料(資源)しかない国は、交渉して道具(技術)を借りるなど、それぞれの国で工夫しながらゲームを進めた。
途中、製品の値段が変わる、新製品が開発される、また特定の国にだけ有利な情報が流されるなど、市場の変化に対応することも求められた。
最後に、国ごとに稼いだ金額を発表。
貿易ゲームを通して、世界の格差に気付き、自分事として体験することができた。
ゲームの後は、気付いたことや学んだことを振り返り、グループ内で発表した。
[生徒の振り返りまとめ]
設問1 貿易ゲームで担当した国は何ですか? ゲーム中に感じたことや思ったこと、気づいたことなどを教えてください。
- 国が持っている資源などをどう取引すべきか難しいと思った。
- 製品を作る材料が紙しかなくて、A国に行ったが欲しかったコンパスを貸してもらえなく交渉が難しいと思った。両方の利益を考えて、どちらも満足いくようにするのは難しく、これを世界で考えるとみんなが満足する解決策を出すのは困難だと思った。
- 資源や材料が少なく、どうやって製品を作るかを考えたり、値段の変動があり大変だった。
- 自分の国は割と資源が豊富だったが、先にどんどん貿易してしまい、自分の国に資源が残らない状態になってしまった。
- 先進国と発展途上国との間で差があった →買い取ってくれる時に1mmのズレも許してくれなかったのに先進国には適当だった →交渉する時相手が先進国だとどうしても自分たちのメリットがさがってしまった。
- 国によって資源だけでなく技術の面でも大きな差があった。労働力はあるのに生産する力がない。国の情報や資源をうまく管理することも大切。
- 物の貸し借りや、交換の時に、相手の条件に合い、尚且つ自国のメリットがあるような条件にすることはとても難しいと思った。
- 自分の持ってる資源や材料が少ないと交渉も不利になるので何もできなくなる事が分かった。ひたすら紙を切っていたが、途中で売れる価格が下がったりして難しかった。
- 自分の担当した国は自分たちでは稼げなかったので、先進国に出稼ぎに行った。そうすると自国での関わりがなく、団結力がなくなっていくことを感じた。また、マーケットの近くに先進国のAやBがあり、先進国しか教えてもらえない情報があるなど、発展途上国の方が不利な状況になると思った。
- 封筒の中の物が粗末で、他の国の人にも相手にしてもらなかった。しかし世の中には何もすることがない人もいるのだと知り、逆に貴重な体験をできたと思った。
- 先進国。 ゲームでは交渉の大変さを感じた。先進国の方は良くても途上国はすこし不利な状況で交渉するしかできないなど、双方が納得いくように交渉するのが大変だった。
- 担当した国は貧しいとも豊かとも言えない国、最初はあまり資源がなかったので他の班に労働者として働かせられた、今回はゲームなので楽しく労働したが、実際の外国人労働者は待遇の悪い中、知らない土地で仕事をさせられるので問題に感じた
- ここは何でも持っているが、貸し出せば無くなるという国。急ぎすぎず使い方や計画性を持って行動して利益を上げるのが正解だった。技術を貸し出しすぎて何も無くなってしまったのでそこを考えるべきだったと思った。
- 資源を多く持っているが、それを生かす技術が少ないと思われる国。後進国はマーケットからの信頼度が低いために、商品の優先度が低く、先進国との対応の差が大きい。また、先進国とで不利な条件でしか交渉することができず、利害関係を一致させ交渉するのが難しい。
- 最初にAからJの国の配置に意味があると思った。AやBの先進国はマーケットに近くて、情報が集まる世界の中心である事を意味していて、途上国は逆に今回の貿易ゲームでいえばマーケットから遠く、ゲーム的に不利。 私はB国で利益の3割を貰うという約束をした上で働いたが、本当にその情報を信じていいのかという事にも気付いた。実際の途上国の人々は知識がないので現実世界では有り得なくもない話だと思った。
- 発展途上国。 紙、鉛筆、お金だけのスタートから、チーム内での作戦として「労働」を中心とし、他国で働くことにした。労働だけではなく、生産もできないかと考えながら他のグループと交渉したが、うまくいかずに悔しかった。
- 他国との交渉の中で、自国のメリットとデメリットを天秤にかけてデメリットが大きいことはやらないなど、その線引きが難しかった。労働力を提供してもらう代わりに、利益の40パーセント分を渡すことになったが、ほんとに40でいいのかと悩んだ。
- 比較的裕福な国でゲームをした。 技術となるハサミなどの道具も揃っていて他国より序盤は進めやすかったと感じた。 他の国からの道具の貸出や資源(紙)の交換をする際、自分の国や周囲の状況を把握していたりすることが重要だと思っていたが、中々上手く立ち回ることが出来ず能力を発揮することが出来なかった。
- AやBなどとフェアな契約を結ぶことが難しい。自分から契約を言っても相手の方が立場が上なので相手の言いなりのようになってしまった。マーケットでの各国に対する接し方が違った。
- マーケットに商品を売りに行ったが、マーケットでの審査が厳しく設定された金額で買い取ってもらえたものは1つも無かった。それに比べてA国やB国への審査は甘く、マーケットでの審査は国に対する信頼性を意味しているのではないかと思った。
- 貧困国。 自分の国は先進国のグループに不当な条件を提示されて、その条件を呑むしかなかった。貧困国は先進国と比べて弱い地位にあり、平等に扱われないと感じた。
- B国(先進国)。 自分のテーブルから動かなくても交渉が進んだり、利益を増やしたりすることができること。 途上国より技術力があるので、交渉を自分たちが有利な立場で進められること。またその一方で、途上国は不利な立場にあるので、我慢しなければならなかったり、不満が出てきたりすること。 基準がわからないので、平等な交渉にはならないこと。 資源がなかったり、労働力が足りなかったりするので、技術力だけがあっても意味がないこと。 先進国は利益が出ても、ほかがどの位利益を出しているのか分からないため、さらに多くの利益を求めるので、格差が広がってしまうこと。 情報格差を肌で感じた。
設問2 貿易ゲーム後の振り返りで気づいたことや感じたこと、考えたことなどあれば教えてください。
- 先進国の方が情報網があって危険を予測して回避できるから利益が出やすい。それに比べて途上国は情報が入りにくく、誤った情報に騙されやすいので余計に経済格差が大きくなると思った。
- A班やB班のように、元から資材が豊富な国は最終的にかなり稼ぐことができ、資源が少ない国は最終的に稼げてない国が多かったので、国の貧困問題を解決させることは非常に困難であることを実感した。
- シールの情報が全然入って来なかった 先進国と発展途上国で差別があった →国の事などを決める時も力の強い国だけの意見を取り入れて弱い国の意見は聞かないのと同じ事だと思った 出稼ぎに行くとその国特有の事が出来なくなる →新しい技術や機能を得るとこが出来る →収入が多い事もある。
- 先進国の立場で貿易をしていると、自国の利益を考えるのに必死で他の国(資源や技術が足りない国)について何も考えなかった。このように貧富の差が生まれると実感した。情報が全く入ってこない国もあり、格差は資源だけでないと気付いた。
- マーケットの対応もA国やB国は優先される。 情報がある国とない国がある。 シールはレアメタルなどの希少価値が高いものを表す。 I国は他国に働きに行くことで稼ぐ→自国らしい生産ができなかった。
- 経済が豊かで安定している国では、たくさん労働者を持ち、交渉や契約をしながら保っている。逆に安定していない国では、利益を求めて自分達にとってプラスになることを考えながら国を作っていると思った。
- 貧困の国として活動したが、知識や技術がその国にはなく、経済の格差が生まれている。もっと貿易しやすい環境や各々の国で社会を良くするために何を生産すべきなのかを明確にすることが大切。それが出来れば国どうしの関係も深まり世界平和にも繋がると思った。
- それぞれの国の生産の仕方や交渉の仕方が違った。品揃えが良くてもあまり稼げない国や、最初は品揃えが悪くても労働力などで沢山稼いだりしている国があって面白かった
- 貿易ゲームは先進国と途上国を表しており、道具はその国の技術、紙は資源と考える。紙があっても道具が無かったら何も出来ないし、道具があっても紙がなければ何も出来なかった。今の世界でも資源があっても技術がなくてできない途上国の人の気持ちや、先進国はどんどん労働力を必要とする気持ちが分かった。マーケットでも先進国は信用されている。マーケットと国の近さに違いがあり、差別されていたことが分かった。 他にも先進国には情報が渡るのがはやくて途上国には情報が行き届かないとなどの差があると考えた。
- 情報格差について考えさせられた。自分の国にはあまり情報が回ってこなかったので立ち回りが不利になった、実際にも情報の回ってこない国があると思うと世界から取り残されて行く恐怖を感じた 日本国内でも情報弱者といわれる方がいて、その方の気持ちも理解出来た。
- ゲーム中、先進国に人が多く集まっていた。このことから、世界でも先進国の技術や、影響力、経済などを求め、どうしても先進国が中心となってしまっているではないか。
- 私たちの国は最終的に20万以上稼ぐことができたが、自国で生産したものは何もなく、これは1つの国家として成り立っていないし、その国らしさがないという感想が出た。また、その国の人の人権が守られていないという事にも繋がることがわかった。 貿易ゲームでもとりあえず働くしかなかったので、先進国に出稼ぎにきている人々の労働条件は過酷なものだとも思った。
- 労働に力を入れた為、自国で生産することができなかった。今回、自分たちの魅力を発揮することは難しかった。しかし、難しい中でもどのようにすればよいかを考える必要があると思う。ゲーム中、発展途上国の気持ちになって活動できた為、更に貧しさなどが感じられた。全体の意見を聞いて思ったことは、発展途上国であると考えがひとつに集中してしまい、誤った情報を聞き取ってしまうのではないかと考えた。反対に先進国は、技術等が豊かで余裕がある為、そのようなことはあまりないと活動を通して思った。
- 他国との利害が一致しないと、なかなか話が進まず、限られた資源、限られた技術を他国と上手く交渉してお金を稼いでいくのは難しかった。また、他国との連携ばかりを考えていると、自国のことは疎かになってしまうと感じた。
- 場所が離れた後のグループの方針や状況を理解することが上手くいかず、利益を得ることが難しかった。作業中、他国の人が割り込んでスムーズに作業できなかったと発表していた人もいた。 ゲームを通して、 紙=資源 道具=技術 人=労働者 シール=希少性の高いもの(レアメタル、プラチナなど)や流行 お金=財力 ではないのかと考えた。 また作業の妨げになった外部からの妨害は、外交からの非難の声や野次だと感じた。
- 自分たちの国はシールが入っていたが、マーケットでは売れなかったのでBの国にシールを渡してそのうちの半分の利益をもらうという契約をした。現実世界で考えると、自分たちの国で採った貴重な資源レアメタルなどが自分たちで売れないのは悲しいと感じた。
- マーケットでの審査が厳しかったのは現実で考えてみるとmade in Japanとmade in Chinaどちらを買うかと聞かれたら日本製を買うのと同じことだと感じた。また、裕福な国はマーケットへの距離が近いため最新情報が入ってくるのが早い一方で、貧困な国にはなかなか情報の行き来がないのは現代でいう携帯電話などからくる「情報格差」を意味しているように感じた。
- 利益ばかり追求してしまうと、自分の国しか見えなくなってしまう。これが途上国の支援を、先進国が見逃している原因になっていると感じた。 自国の利益だけでなく、途上国に目を向けて支援をする必要がある。そして、協力し合うことで、どちらにも利益になることを感じた。 マーケットでも先進国は優遇されていて、早く取引できる状況があり、差別や格差があると感じた。 初めから不平等に物が配られているため、自国の利益を出すためには国ごとの作戦が必要だと思った。そして、それをどう交渉するかで国の明暗が決まってくると感じた。
- 国と国同士が、公平に利益を得るためには、まず自国の状況を把握した上で交渉しないといけない。また、いかに「平等」という考えが難しいものかを考えさせられた。